第41回
カスピ海ヨーグルトのふるさと、
ジョージアの食事と健康・長寿
重森 貝崙 元・岩波映画監督
一般社団法人中日文化研究所 専務理事
映画 :「活力ある長寿社会をめざして―食事と健康WHO世界地域調査から」
コーカサス・グルジアは、家森幸男博士が「循環器疾患と栄養・国際共同研究(WHO CARDIAC Study)」の皮切りに、1986年、他の地域に先駆けて初めて調査に訪れた国です。この地は、以前から世界の長寿地域の一つとして有名でした。長寿の原因としてはまず豊富な牛肉や乳製品、野菜や果物をよく食べるというバランスのとれた食生活。「カスピ海ヨーグルト」はこのグルジアが発祥です。次にお年寄りが家族をはじめ、まわりからも尊敬され、自身も現役で仕事をこなしている、すなわち生きがいある日常生活を送っているご老人が多いということ、などが調査で判りました。
第42回
いつまでも若くあるための哲学のすすめ
和田 渡 阪南大学経済学部教授
急速に高齢化が進む日本では、各地に介護施設が増え、人手不足も顕著になってきています。他方で、介護費用や病院の治療費をできるだけ減 らすために、老人には健康な状態で長生きしてほしいという風潮が強まっています。そのためもあつて、いわゆる「健康本」の出版数はうなぎのぼりです。その無数とも思えるバリエーションの底に共通しているのは、いかに身体を実年齢よりも若く保つか、あるいは見せるかという、若さへのそれこそ不健康なまでの執着です。
それに対して、古代ギリシアの時代から、「心、精神、魂」のありかたを問題にしてきたのが哲学です。哲学者たちは、いつまでも若々しくあるためには、心をしなやかに保ち、成長させることが欠かせないと説きました。彼らは、若い時代から心を鍛えることを続ければ、老年期には叡智が輝く実りの季節を迎 えることができると信じたのです。
今日の経済重視の日本では、老人は経済効率と言う観点から語られることが多く、かつて一定の積極的な意味を持つていた「敬老」や「長老」という言葉は力を失つてしまいました。しかし、昔から哲学者たちが老人に与えてきたのは、円熟の境地を生きる神々しい存在というイメージです。
講演では、哲学者たちの老年と若さについての考え方の特色について、その一端をお話してみたいと思います。
第43回
高齢者ほど、もっとお魚たべよう!
―チベット、ネパールに学ぶ〝海の幸〟の力―
重森 貝崙 元・岩波映画監督
一般社団法人中日文化研究所 専務理事
映画 :「明日の健康を拓くタウリンーWHO・ネパールの食事調査から」
1991年の調査はネパールです。検診地は、首都カトマンズから更に北東のナムチェ・バザール。ここは海抜3600メートルの高地、この地域の住民は以前チベットからヒマラヤ山脈を越えて移住してきたチベット民族です。民族としての別名はシェルバ族、苗字はテンジンとい名前がほとんどで、エベストに初登頂したヒラリーとテンジンという名前を記憶している方もおられるでしょう。ここでの検診でまず判ったのは、高血圧の方が多い、ということです。せめてお魚を食べてくれればと思ったのですが〈魚には先祖の霊が宿る〉という宗教的禁忌によって全く口にしません。魚に含まれるタウリン・DHAなどは血圧を下げ、動脈硬化を予防する働きがあるからです。そこで知恵をしぼり、検診参加者に「タウリンの粉末」を1日3グラム(朝・昼・晩各1グラムずつ)、2ヶ月間摂取してもらうことにしました。さあ、その結果は?